1ーA

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 ざわざわと騒めく学生達。 それもその筈で、あの英雄の息子が自分達のクラスにやってくると言うのだ。 騒ぐなと言う方が酷と言うものだろう。 それでも、クラス担当の教師が姿を現せば、それなりにクラスは静かになる。 「さぁ、今朝のホームルームでは新しく仲間に入る生徒を紹介する。 入りたまえ」  教師の視線につられる様に学生達も一斉に視線を向ける。 そして学生達は扉を開けて入って来た少年を確認して、驚いた様な表情を浮かべた。 学生達の反応に、内心で穏やかではない感情を浮かべながら、クロードは表情には出さずに皆に挨拶を始める。 「初めまして、クロード・ローゼスと言います。 宜しくお願いします」  すっと一礼した少年に、教師は指を刺しながら口を開く。 「あそこが君の席だ」 「はい」  返事を返した後、示された席へ向かい腰を落ち着ける。 と、見計らっていたようで教師が再び喋りだす。 「今日は他に連絡はない。 それでは最初の授業の準備をするように」  言うだけ言うと踵を返す。 学生達は当然去っていく教師など気にも止めず、クロードに視線を集める。 注目を集めたクロードは、しかし、特に何が出来る訳でもなく内心で冷や汗をかく羽目に。 と、打開策ではないが隣に話し掛けれる事があるとにこっと笑みを右隣に向けた。 「どうも初めまして」 「はっ、初めましてぇ」  過剰反応する赤髪の少女に、苦笑をクロードは返す。 「俺ってそんなにおかしいかな? 何か皆見てるし」 「おおおかしくはないですよ。 その、か、格好良いから皆見てるだけかと」 「え?」  少女の言葉に固まるクロード。 いや、確かに今までも容姿について褒められた事はあるが、いつも父とセットだった為お世辞だろうと思い込んでいたのだ。 とはいえ、勿論どちらかと言えば顔は整っているし、普段から鍛えてる身体も見苦しくはないと思っていたのだが。 それでも、同学年の女の子に、父親抜きで褒められた事に同様を隠せず間抜けな反応を返してしまう。
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