氷点下の表現者

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飾りらしい物は何一つ置かれていないオフィスにコーヒーの香りが拡がる 彼がそのカップに手をつける事はない ただ"香り"を楽しみたいだけなのだから 私はその"香り"と彼の燻らせる煙草の"香り"が交わっていくこの時間が好きだ きっちり30分後にカップを片そうとした時 ふと、手を掴まれた 驚きもしなかった 私に興味があるわけではない事がわかっているから 今の瞬間、私の"手"に興味を持った それだけの事だ
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