魔少年しえす(びゃーぼちゃん)

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サイドシートに少年を乗せる事は珍しい事ではない よくある事だ ただ何時もと違うのは 彼が『男と女』と言う前提で横にいる事だ ある程度の経験があると分かっているし自分も歳上ぶって彼を諭したりするような話をする気はない 正直肌を合わせるつもりで会ったのだ 思ったよりも口数は少ないが緊張した様子もなく ただ流れるBGMに会わせて膝を叩く指先から余裕を感じた サイドボードに乱雑に置かれたMDを手に取ってみたりはするが曲を代えたりはしない 私が彼の為に用意した曲をかけていると気が付いているかのようだ 二人の間にさほど会話はない しかし私に焦りはない ありきたりな質問をするより 流れる夜景に目をやっている彼が今何を考えているかを想像する事を楽しんでいる 何時もなら相手に合わせた会話を選び楽しませる事に集中するのだが… 多分そんな会話こそ彼をしらけさせてしまうだろう 車が高速に上がった時に 白く細い指がデッキを操作しディスプレイに10の数字が表れた 流れてきた曲は『湾岸ハイウェイ』前に自分にしては珍しく入れ込んでいたヤツとの思い出の曲だ 自分で流すつもりでいたので動揺したが 平静を装ってシガーを手に取った 「バニラの香り車内は甘いな…」 彼が口ずさむ そうだ私がバニラのアロマを使うのは以前 人目を忍んで会っていたアイツが忘れられないからだ 今横にいる少年はそいつによく似ている 会う気になった理由はそこだったのだ まるでその事を見透かされたような気がして少し胸が痛んだimage=404347302.jpg
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