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小さな中庭、生い茂る木々。
佐那は木漏れ日に目を細めながら、芝生に広げたノートにシャーペンを走らせた。
数字、記号、アルファベット…。
ヘッドホンから流れる
透けるように澄んだ声と音楽に合わせて手がリズミカルに動く。
シャーペンは魔法のように白いページに数式を残した。
「……な…!」
ヘッドホンごしに、誰かの声が聞こえた気がして顔を上げる。
それと同時に、自分の意志では無い力にヘッドホンが外され、唐突に歌声が途切れた。
「全く、聞き始めたら止まらないんだから」
ふぅ、と不機嫌さを含んだため息が吐き出される。佐那が顔を上げると、それに向かって、声の主は顔をしかめた。
暗い茶色のショートボブと、少し釣り目の少女、同い年の三上嘉穂だ。
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