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「良いのか…彼奴?」
「…何がだよ」
「…何でも。それより、離れてくれねぇか?」
私は…いや、俺は途中まで歩いて人気が少なくなったから、鬱憤をはらす為に悟に正面から抱きついた。
…抱きつくと言うよりも絞めると言った方が良いかもしれない。
「ヤダと言ったら…?」
「…はぁ、好きにしろ。ただし、余り強く絞めるな」
悟はわざとらしく溜め息をつく。
「…了解」
「成長しねぇよな…透」
「何が…?」
悟は、学校では俺を「麻田」と呼ぶ。悟曰く、恥ずかしいらしい。
「…胸」
「…必要ねぇよ。そんなもん。それより、お前のポークウインナーは小さいままか?」
してやったりと言わんばかりの面を悟に見せてやった。
「てっ…てめぇ!!」
殴られる前にさっと、悟から離れた。
「さぁ…て、お前ん家で漫画読みまくるぞ!!」
勢い良く私は、走りだしやれやれと、苦笑を洩らしながら悟はゆっくりとついてくる。
「遅いぞ、悟!!」
「お前が早いんだよ、バカ!!」
「五月蝿い!!」
俺はその一言を叫んだ後、さっと悟ん家まで駆け出した。
悟ん家と、俺ん家は隣近所。それが理由にはならないけれど、自分の家のようにくつろげる。第2の家と言っても良い。
「ただいま!!」
「お帰りなさい、透」
「お帰り、透さん!!」
当たり前のように、悟の母静香さんと勢い良く抱きついてくる弟の凉也がお出迎えをしてくれる。それが俺はとてつもなく、嬉しく感じる。
「あら…悟は?」
「置いてきちゃいました」
冗談ぽく、俺が言うとクスクスと軽やかに静香さんが笑い、凉也は苦笑を洩らす。
「そんなことより、駅前でシュークリーム買ったのよ。透一緒に食べましょう?」
「はい!」
元気良く俺は返事をすると、凉也がお茶を用意するとキッチンに向かっていったので、静香さんはお皿お願いねと凉也に頼む。
「開けても良い?」
俺がウズウズした様子で静香さんに問うと、屈託のない笑みで勿論と言った。
「ありがとう!!」
中を開けると、ふわっと甘い匂いが鼻腔をくすぐる。
あぁ…幸せだぁ。
それにしても、静香さんは童顔だ。悟と並んで歩くと、姉と弟。又は、恋人。
まぁ…悟には、美人な彼女は不可能だろう。
「お待たせ、お二人さん」
ニコッと聞こえそうな程の笑みを浮かべながら、インスタントコーヒーをテーブルに置いた。
「サンキューな、凉也」
「ありがとう、凉也」
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