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俺は思い付くまま好青年の容姿を伝えた。
真剣に、凉也や静香さんは耳を傾けるが悟は、読みかけの本を読んでいた。
「…知ってるか、凉也?」
凉也は首を傾げ、難しそうな顔をする。
「多分だけど…大野誠だと思う」
大野誠…何処かで聞いたことのある名前だなぁとぼんやりと考えていると、悟が呟いた。
「彼奴じゃねぇのか…大食いまーぶぅ?」
確かに同じ漫研に居たまーぶぅとは同姓同名だが似ても似つかないくらい縦長だ。
まーぶぅは、横の方が長かった。
「ダイエットでもしたんじゃないの?その…大野君?」
静香さんは首を傾げながら呟く。
何の為にと、言いそうになったがもし、俺に告白する為に痩せたのだとしても俺からすれば、まーぶぅは後輩の中で一番仲の良い奴にしかずきない。
「…わかってたら、もっと優しい言い方出来たかもしれないな」
彼奴…傷ついたよなぁ。はぁと俺は深い溜め息をついた。
「後祭りなんだから、気にすんな。それに、まーぶぅかどうかも定かじゃねぇだろ?」
「そうだな。サンキューな、悟」
その後、他愛のない会話や笑いが俺達を包む。
「ただいま。おっ、透来てたのか!!」
「お邪魔してま~す」
気がつけば、19時30分。長男の、誠二さんだ。三人兄弟。
「飯食っていくよな?」
「いや…悪いよ」
誠二さんは、ガシガシと透の頭をかき混ぜる。
「ガキが一丁前に悪い何で言うなよな。食べていけ、な?」
「あぁ…」
誠二さんには適わない。
何時もそうだった。喧嘩をすれば必ず泣かされた。…俺や悟に凉也もだ。
思いついた新技と言って実験台にさせられている。…失神した記憶、骨折、脱臼…虚しくなりそう。
今は、サラリーマンとして社会人とまともになったが、昔は頭にフランスパンやパンチをかけてはいないがヤンキーだった。
酒や煙草は勿論、パチンコに出入りが常識だった。
「今日は早いんだな、兄貴」
「ん?何だ、俺が居なくて寂しかったのか、悟?」
誠二さんはニヤニヤと笑いながら悟に問い掛ける。
悟は溜め息を付きながら、首を振った。
「肩叩かれたのかと思った」
「「…!?」」
「てめぇ…」
しれっと悟は言った。俺は…確実に巻きぞいを食らわされると思ったので、キッチンに逃げた。凉也も一緒に。
その後、悟の断末魔がリビングに響いた。
あぁ…断末魔を聞いているだけで、昔の記憶がよみがえりそうだ。
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