四話「悪魔の子」

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「泣いていたら……ダメ、だよな」  ゆっくりと顔を上げ、涙を溜めた瞳をキュッと擦る。そしてベッドから立ち上がり、写真を本のページに戻し再度戸棚に戻した。エストの表情は、どこか晴れ晴れとしている。 「会いに、いきたい」  先ほど別れたマリアに、もう会いたくなった。マリアのあの屈託のない笑顔でこっちを見て、あの澄んだ可愛い声で名を呼んで……  気づくと、エストは自宅を飛び出しており、村の広場へと自然に向かっていた。  ――会いたい。  ――マリアに会いたい。  その気持ちが、エストの足を動かしているかのように、足早になっていく。  道を阻む木々を容易に通り抜ける。村人がチラホラと目に入るようになった。マリアのいる場所まで後少し。後少し。
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