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「はぁ……はぁ……」
息絶え絶えの中、先ほどマリアと会話を交わした広場に辿り着いた。物陰から辺りを見渡す。
(……いた!)
すると彼女の自宅らしき建物の前でマリアは誰かと話をしていた。彼女の父親で、二人共すごい剣幕でまくし立てている。ただ事ではない様子だった。
「何でダメなのよっ!」
「あやつは悪魔の子だからだ!! お前を危険な目に合わせたくない!」
ふと耳に入った会話でエストはピンときた。言い争いの元は、自分だと。
エストは彼女の父親に目をやる。すると、すごい形相で、怒りにも悲しみにも見えるような複雑な表情を浮かべていた。娘が心配なのだろう。今は無害とは言え、魔属と人間のハーフが側にいる。それだけでも充分に恐ろしい事なのである。
今さっきの浮かれた気分はすっかりと消え、覚束ない足取りで、来た道をゆっくりゆっくりと戻る。
ーーズキン
また頭が痛い。今日でもう何度目だ。時たま襲いかかる小さな頭痛。最初は大して気にしていなかったが、最近じゃ、一瞬の激しい痛みにのたうちまわる事もしばしば。
僕は、一体どうしてしまったのだろうかーー
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