77人が本棚に入れています
本棚に追加
* * *
その晩。エストは、ひっそりと川辺に佇んでいた。辺りは暗く、彼の表情がわからない。すると草を踏む音が微かに鳴り、その音は段々とエストに近づいてくる。
「はぁはぁ……ご、ごめんね! 親逹が、なかなか寝てくれなくて……」
姿を現したのは、息を切らせるマリアであった。マリアの手には小さいメモが握られていた。
「でもビックリしたよ。いきなりこの手紙で呼び出すんだもん」
「ごめんね。こんな夜中に」
申し訳なさそうにエストは苦笑いをしてみせる。そんな彼の頭の天辺を指で小突き、いつもの太陽のように明るい笑顔をし、
「こ~ら! またネガティブ? 私は来たかったから来ただけだよ」
「……」
「……エスト?」
いつもとは違う雰囲気だと感じ取ったマリアは、伏せてあるエストの顔を覗きこむ。
最初のコメントを投稿しよう!