二話「指南」

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「受け入れる“過去”……変です」  ふと謎めいた言葉を洩らすシェイド。ベイオウルフはその言葉の真意がわからず、眉間に皺を寄せながらシェイドを見る。 「過去は僕を形作っているんです。受け入れるとか受け入れないとか……変ですよ」  誰と誰が愛の育みをして、シェイドが芽生え、産まれてきた。その過去はどうやったって塗り替えられる物ではない。 「何が言いたい?」 「ただ、“知りたい”んです。僕の母さんと……父さんの事を」 『知る』。  そう。『知る』という事で、結果的には過去を受け入れる事になる。 「だから教えてください。僕の父さんの事を」 「……」  一筋の沈黙が流れる。そしてそれを断ち切るようにベイオウルフは足を動かし、ふとその場にしゃがみこむ。 「……来い。話をしてやる」 「はいっ!」
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