77人が本棚に入れています
本棚に追加
シェイドは自らの内に眠っていた力に戸惑いを隠せないようだった。神の力が受け継がれていたのだから、尚更。
「元々、僕にその力があったのか……何かのきっかけで目覚めたのか、よくわかりませんが」
ふとあの飛空船での出来事を脳裏に浮かべる。今でも、昨日の事のように鮮明に思い出される。
――クリマを救い出すという勇気。
――初めて対峙した魔属が放つ殺気。
――死が襲いかかる恐怖。痛み。
全て初めての感覚であったのだ。
そして、消えいく意識の中、あの声を聞いた。
今でも耳に残る。凄く優しい声。
「……きっと、あの声で僕は目覚めたんだ」
気づくと、ポツリポツリと天空から小さい雫が零れ落ち始めていた。
木々の葉に弾かれるように雫が音を立てる。
「……すぐに止むだろう。止んだら、始めよう」
「はい」
シェイドとベイオウルフはそんな冷たい雫を暫し身体中に浴びていた――
最初のコメントを投稿しよう!