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両親はエストをこの村に残し、姿を眩ましてしまった。容姿も純血の人間や魔属にはない珍しい髪の色と瞳。そんな事からエストは、村の皆に「悪魔の子」と称され忌み嫌われていた。だがエストは気にもとめていなかった。
嫌うならとことんまで嫌えばいい。それで皆の気が済むなら。傷つくのは慣れている。涙を流す事なんてとうの昔に忘れた。怒りってなんなんだ。悲しいってなんだ。
全ての感情を昔に置いてきた。ただの人形。
――既にエストは生きる意味を失っていた。
親には見捨てられ、その境遇に理解を示そうとはしない輩達からの誹謗中傷。エストは泣きも怒る事もしなかったが、ただ「絶望」に満ちた、濁りきったピンクゴールドの瞳をしていた。
「エスト!」
すると一人の、エストと同じ年くらいの少女が、可愛らしい声で呼びながら小走りで寄ってきていた。
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