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明るいキャラメル色のふわふわした髪を耳あたりまでカットしており、ピンク色のリボンをカチューシャのように飾っている少女。くりくりとした淡い黒い瞳。ちょっと乱れた呼吸を整えていた。
「マリア……僕に近寄らないでって言ってるじゃん」
無機質で冷たい瞳を駆け寄ってきた少女――マリアにピシャリと言い捨てる。だがマリアは理解していない様子で、きょとんとした表情を浮かべている。
唯一、この少女だけがこんなエストに毎日毎日話しかけているようだ。
「どうして近寄ったらいけないの?」
「っ」
答えづらい事を平気で聞いてくる。エストはマリアの事を苦手としていたのだ。周りにいる人間達とは明らかに違った感情を抱いているようだったから。
おずおずとエストは口を開き、
「それは……僕が、悪魔の子だから」
「理由になっていないわ」
エストは胸をドキリとさせた。マリアのこの真っ直ぐで勝ち気な瞳をどうも直視できない。エストは目を反らしながら、口をモゴモゴさしている。
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