四話「悪魔の子」

9/38

77人が本棚に入れています
本棚に追加
/154ページ
 エストがやってきたのは、古ぼけた木材で組まれた小さい小屋。同じ木で出来た扉を開けると、中は吹き抜けとなっていて、見た目以上に広く感じる。他には少し草臥れた布で作られたベッド。黒い木材で作られたクローゼットや棚もあり、生活感漂う小屋である。  エストはこの村にきてから、この小屋を自ら作り出し、生活している。  食物などは近くの林に実っている小さい果物を採ったり、狩りをしてその肉を乾燥させ、保存食として利用している。時たま、マリアが内緒で持ってきてくれる、良い匂いがする野菜のスープや焼き立ての香ばしい香りを漂わせるパンが、エストにとっては唯一のご馳走であった。 「ふぅ……」  軽くため息を溢し、ベッドに腰を落とす。 「本当、マリアには敵わないな……」  小さく微笑みを浮かべ、顔を上げる。  村の敷地内とは言えない位置に建てたこの小屋。エストなりの配慮なのか、裏手の林に来ない限り村人達の視界に移らない場所にわざわざ建てたのだ。
/154ページ

最初のコメントを投稿しよう!

77人が本棚に入れています
本棚に追加