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「明日の再臨祭さ、ナンパしに行かね?」
記録的な冷夏を観測した、今年の8月。そんなこの月も中旬に入り掛けた頃、人気の少ない夕焼けに染まる道で、一人の青年がもう一人の青年に話しかけた。話しかけられた青年はどこか幼さの残る顔立ちをしている。
「何度誘っても無駄だって、何度も言っただろ? 明日俺は予定があるの」
話しかけられた青年は缶ジュースを飲みながら断る。彼の顔は何回言っても諦めない友人への呆れで染まっていた。
「去年もじゃねーかよ繰夜(クルヤ)、何の予定かぐらい言ったって良いじゃねーかよ」
繰夜と呼ばれた青年は、あちこちが跳ねた茶色い短髪の後ろをかきながら言い返す。
「墓参りだよ、墓参り。
大体何で再臨祭にまでナンパするんだよ竜伸(タツノブ)は、その行動は世界中のみんな理解出来ないな」
「バーカ、再臨祭だからこそナンパするんだよ。神様がきっと俺の好みの女の子と巡り会わせてくれるからな。それに、俺からすればお前の服装……全く理解出来ないぜ」
竜伸と呼ばれた長身の青年は金髪で、大量のアクセサリーを身につけて居る。彼はそう言った後、妄想の世界に入ったようだった。
対する繰夜のは格好は、小さな体に相応しく無いブカブカのパーカー。周囲からは暑苦しいと絶大な評価を誇るこの服だが、純白で通気性に優れたこのパーカーは繰夜のお気に入りである。
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