第0章 始まりの前日

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『再臨祭』 8月17日に神が神霊となり、現実に降りることを祝う祭りである。 世界単位で行われるこの祭りは国によって祝い方はさまざまだが、全ての人間が神の再臨を祝うのは同じである。 そんな日にナンパをしようとする竜伸は異端なのだろう。 「竜伸、お前の家あっちだろ? 曲がらなくて良いのかよ?」 「おっと、そうだったそうだった。早く帰らねーとバイトに間に合わねーや。」 妄想世界から帰って来た竜伸は急いで歩きだし、手を大袈裟に振りながら。 「じゃあな繰夜。また明日……じゃなくて明後日な!」 そう言い残すと走り去って行った。 「ったく、本当に騒がしい奴だよな……」 繰夜は笑みをこぼし、竜伸が見えなくなるまで見ていた。 晩飯は何にしようか? 冷蔵庫の中身を思い出しながら繰夜は、ダボダボのパーカーに手を突っ込むと帰路についていった。 ――――――――――― 「やっぱり言えないよなぁ……まあ、言っても何だこいつって思われるだけだろうけどさ」 「まあ、普通に考えたら信じるわけねえもんな……」 竜伸は走りながら一人呟く、ただ自分の言葉を馬鹿みたいだと言いたげに。 「お前の後ろに女の子の霊が見えるって言ってもさ」
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