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真夜中の静寂を切り裂くように扉を叩く音が響き、彼は目覚めた。
しかも、叩く音で流行りの曲を奏でているのだから彼にしてみれば迷惑極まりない。
「早く鍵開けろよなー、扉蹴り壊すぞー」
まるでこの行為を楽しんでいるような声を聞き、彼は溜め息をつきながら扉を開けた。
「何の用ですか、いったい?」
「おいおい、なんでサビの部分で開けるんだよ。全くわかってないなぁ」
「用件はなんですか、こんな真夜中に遊びに来たわけじゃ無いですよね?」
扉の先にいた男は洒落を言った後、急に真剣な表情になり電子タバコを吹かしながら答える。
「見回りに決まってるだろ、お前がいないとパンドラが紛れててもわからないからな」
「見回りって……、今日は再臨祭ですよ? 神愛社の奴らが活動するとは思えませんし、パンドラだって再臨を祝うはずですよ」
「そいつらが動かなかったとしても、あいつらには再臨祭なんか関係ない。それに五年前に魂虚者(コンキョシャ)が一人消えている、用心して損は無いだろ?」
男は電子タバコを着崩れしたスーツの胸ポケットに入れ、気の抜けた顔に戻る。
「じゃあ行くか、ししとう……いや神堂(シンドウ)」
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