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昔々あるところに、四匹の獣がおりました。彼らはそれぞれ、《紅蓮の鳳凰》、《蘭青の青龍》、《緑翠の麒麟》、《漆黒の玄武》といいました。
その中で玄武は、盾となるほか役割が無く、主人に使われなくなり、いつもひとりぼっちで皆が帰ってくるのを待っていました。
ある日玄武がいつものように目を閉じてじっと待っていると、どこからか声が聞こえてきました。
『玄武、あなたは寂しくはないのですか』
玄武は引っ込めていた首をちょっと出しました。
「寂しくない訳が無いだろう」
『本当は仲間のもとに行きたいのですね?』
「そうだ」
玄武は目を閉じたまま呟きました。
「私は盾ぐらいにしかなれないただの亀なのだ」
『そんなことはありません。あなたはただの亀ではない。仲間を思い、勝利を祈る心がある』
「心があるだけで寂しさなど和らぎはしない」
『では寂しさを少しでも和らげるために、私があなたと一緒にいましょう』
玄武が目を開けると、目の前には美しい蛇がいました。蛇は玄武に寄り添って、それから甲羅の周りをくるりと囲みました。
「君は誰だ。何故私に優しくしてくれるのだ?」
蛇はにっこりと笑いました。
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