遠い昔の物語~漆黒の玄武~

2/3
前へ
/59ページ
次へ
昔々あるところに、四匹の獣がおりました。彼らはそれぞれ、《紅蓮の鳳凰》、《蘭青の青龍》、《緑翠の麒麟》、《漆黒の玄武》といいました。 その中で玄武は、盾となるほか役割が無く、主人に使われなくなり、いつもひとりぼっちで皆が帰ってくるのを待っていました。 ある日玄武がいつものように目を閉じてじっと待っていると、どこからか声が聞こえてきました。 『玄武、あなたは寂しくはないのですか』 玄武は引っ込めていた首をちょっと出しました。 「寂しくない訳が無いだろう」 『本当は仲間のもとに行きたいのですね?』 「そうだ」 玄武は目を閉じたまま呟きました。 「私は盾ぐらいにしかなれないただの亀なのだ」 『そんなことはありません。あなたはただの亀ではない。仲間を思い、勝利を祈る心がある』 「心があるだけで寂しさなど和らぎはしない」 『では寂しさを少しでも和らげるために、私があなたと一緒にいましょう』 玄武が目を開けると、目の前には美しい蛇がいました。蛇は玄武に寄り添って、それから甲羅の周りをくるりと囲みました。 「君は誰だ。何故私に優しくしてくれるのだ?」 蛇はにっこりと笑いました。
/59ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加