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「用は済んだからな。…機会があればまた来る」
「ヴィシュヌ様」
顔を上げる。スカンダの手には、一通の手紙があった。それを見たヴィシュヌから少しだけ、笑いが消えた。
「今度は誰からだ?」
「ハヌマーンからです」
「ハヌマーンから?直接言えば済むことだろうに。…まあ預かっておく」
「なるべく早くに、と」
「分かった」
懐に手紙をしまった。ヴィシュヌが席を立つと、チェスはひとりでに最初の位置に並び替えられた。
「それじゃ、また」
男は手を振って部屋を出て行った。
「ところで、あの手紙の中身は見たパオ?」
「いや?見てない」
「そうかパオン」
少年は椅子に座り、にっこりと笑った。
「僕との勝負も受けてパオ!」
“スカンダ、あの手紙は君へのものだったパオ。しかも、宣戦布告の、パオン”
チェスが終わったら、言うことにしよう。父にはもう言ってある。
一瞬の安らぎぐらい、与えてやろう。
カツン。
少年は駒を進めた。
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