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「本当に行くのですか、ホルス様」
「決めたことだ。私は父上の仇を討たなければならない」
「ハトホル様には…」
「言えるわけがないだろう。絶対止めるだろうからな。…ここに長居しても時間の浪費だ。彼女は頼んだぞセルキス。行ってくる」
「どうかご無事で」
天空の島、火山の洞窟。
ぽた、ぽた、ぽた…。至る所から雫が垂れている。ホルスが入った洞窟は、火山の中にありながら妙に湿気を帯びていた。
“だが、やはり暑い…”
熱気が酷い。普通の人間ならばこの暑さで死んでしまうだろう。だが生憎彼は一人の神だ。
「それにしても大層な所に…。古の神々がどれだけ重要視していたのか…」
ホルスの声が響く。どれだけ歩いたか。感覚が狂ってきそうだ。自ら持った松明で漆黒の闇を照らして進む。
しばらく歩くと、ざり、と砂の音がして、ホルスは足下を見た。湿気がない。
“ここか…”
顔を上げ、松明を頭上にかざして口を開いた。
「紅蓮の炎は燃え盛り
蘭青の水は猛り狂う
魔神の主は参上する
魔神の力を借りんと」
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