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言い終わると同時に松明の炎が燃え上がり、広い洞窟内に灯りが灯った。洞窟の隅々まで掛けられた松明に火が燃え移ったのだ。
灯りにより、洞窟の奥が照らされる。
そこにあったのは、海竜に拘束された、一人の魔神の石像。
ホルスは眉をひそめ、松明を洞窟の地面に突き刺した。
「まだ起きないか。炎神」
石像はぴくりとも動かない。
“仕方ない”
「我が名はオシリスの息子ホルス。海竜リヴァイアサンよ」
ギョル、と石像の海竜の目が動き、ホルスを見た。
『ムスコ…ホルス…!』
「役目は果たされた。…海に帰るがいい」
『ヤットカ…ヤットカ…!ワタシハ、ヨウヤク、ヨウヤクヤツニフクシュウデキルノカ…!』
リヴァイアサンと呼ばれた石像はみるみるうちに黒い竜になり、周りに水気をまとい始めた。
“奴…?”
『オオオ、オオオオオ…!』
体に群青の輝きが戻ってくる。
『カンシャスルゾホルス!…ハハ、ハハハ…!』
グワァ、と口を開き、首を回すと、リヴァイアサンは大量の水となりホルスの周りを通り過ぎ、瞬く間に洞窟内から姿を消した。
“行ったか…”
『良かったのかね?』
石像の方から声が響き、ホルスはハッと振り返った。
『吾輩を拘束する術は無くなった訳だが、御主はそれで良いのかね?』
「いいとも。私はお前に用があって来たのだからな」
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