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「今、あれに構っている意味などない」
『ほぉう。そうか。それにしてもこの吾輩に用、なぁ』
「そうだ」
そんなはずは無いのだが、心なしか語尾の抑揚がおかしくなっているように感じる。
“強い威圧感…流石、魔神一族の長と言うべきか”
《天空の炎火》の異名をもつ炎神、イフリート。かつて頂点に立ち、愚行を重ねた為に封印された、魔神の長が目の前にいる。まだ色も戻らず、本来の力を取り戻していないらしいとはいえ、ホルスの血が騒がないはずがない。
『…その様子からして…オシリスの息子よ。御主、吾輩の力を借りに来たのかね?』
「ああそうだ。話が早いな」
ホルスが答えると、石像は石の白い色のままゆっくりと腕を組み、ニヤリと笑った。
『断る』
「なに?」
『我が輩はたやすく力を貸すほどお人好しではない。そして恐らく御主の言い分は我が輩が動くだけの理由に値しない』
「理由も聞かずに決めるのか」
『おおかた仇討ちだろう?』
当たりだ。ホルスは表情を変えることは無かったが、イフリートには表情などどうでも良いようだった。
『フン、図星か。面白味がないな』
「面白味があるかないかは問題ではないだろう」
『そうか?』
バキ、と音がして炎神の腰を止めていた枷が外れた。
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