懐かしい温もり 昼過ぎの夢

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ふんわりとした、世界の中。 あれ?どこでしたっけ。ここ。 『そろそろ船が出るわ』 前から女の人の声が聞こえる。周りからも、いろんな人の声が聞こえる。 どこでしたっけ。 『そうだな。じゃあ、借りさせてもらうよ』 『遠慮なく使ってあげて下さいまし。お力になってくれると思いますわ』 『私もそう思う。君の神々は強いからな』 男の人が、女の人に笑って答える。幸せそうに、笑っている。 どこでしたっけ。 誰でしたっけ。 『あら、いたの』 女の人が私に気付いて、ひょいと持ち上げる。綺麗な髪の毛がくすぐったい。 ふんわりと、男の人は私に微笑んで、頭を撫でた。 ああ、そうでした…あなたは… 『クリス、お母様と仲良くお留守番してるんだぞ』 「お父様……」 目を開けると、ぼんやりと影があった。 「クリスティーナ様、こんな所で寝ると風邪をひきます」 聞き慣れた優しい声。はっきり見えてくると、そこにはクリスティーナを覗き込む顔。 思わずうふふと笑っていた。 「ヴィルだぁ、おはよぉ~」 「おはようございます。クリスティーナ様」 「ヴィル…今ね…お父様の夢を見てたのよ」 「お父様ですか」 「そぉ…。手がね…あったかかったの。優しく撫でてくれたの…」
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