夏の日の

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 今の家のお風呂場は、この春まで住んでいたマンションのお風呂場の倍くらい広い。浴槽も、孝一郎と俺が向かい合って入っても悠々と足を伸ばせる。孝一郎は、白色の浴槽の縁に両腕を置いて寛いでいる。ジェットバスのボタンを押すと、側面と床面から細かい泡が吹き出した。 「これ、くすぐったいけど気持ち良いねぇ」 「うん、そうだなぁ」  縁の上で腕を組んで、その上に顎を乗せる。身体から力を抜くと、お尻がぷかあと浮かんだ。泡に身を任せると、シャワシャワと当たって気持ちが良い。孝一郎に、お尻が浮いてるぞと笑われた。 「今日は海で沢山泳いだし、疲れただろ」 「うん、でももっと遊んでいたかったよ。楽しかった! 海って楽しいね」 「そうだな」 「スイカ割りも、バーベキューも、楽しかった。翔太くんも絵梨ちゃんも、すごく喜んでた」 「そうか、誘って良かったな」 「うん、孝ちゃん……会社の人たちも、ありがとう」 「伝えておくよ」  顔を上げて孝一郎の方を見ると、俺を見て微笑んでいる。なんだか照れ臭くて、目を逸らした。
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