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そう言われてから改めて右腕をみると、添え木と言うのだろうか。ギプス代わりに木を腕に添え、包帯で巻いてある。 包帯で巻いてあるので素肌は見えないが、腕の太さが通常よりも太いことから、骨折部分が腫れ上がっているだろうと予測できる。 ……確かに、江戸時代には洋服は珍しいし、もしかしたらボタンだって無いのかもしれない。 制服だったから……着物で無かったから、異人だと思われたと言うことも、今理解した。 そんな間者かもしれないと疑うほどの異質な人間を手当てしてくれるなんて……心優しい人に、感謝こそすれ非難なんて出来っこない。 私は深呼吸を一つして、頭を下げる山崎さんに声をかけた。 「山崎さん、頭をあげて下さい。」 すると山崎さんはゆっくりと頭を上げた。 「取り乱してしまい、すみませんでした。手当てをして下さったとは知らず、自分の事ばかり……。申し訳ありません。手当てをして下さって本当ありがとう御座いました。」 私は右腕を庇いながら、頭を最大限深く下げた。さっきの山崎さんに負けないくらい深々と。
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