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しばらくして私が顔をあげると、山崎さんは少し微笑んでいるように見えた。もっとも、目元しか見えてないから分からないんだけど。 すると、近藤さんが場の空気を変えるかのように"パンッ"と勢いよく手をたたく。 「よし、それでは深山君の着替えを持ってくるとするか。総司、お前の昔着ていた着物を持ってきなさい。新しいものは買えないが、お古でよければここには着物がたくさんある。この部屋だって自由に使っていい。とりあえずゆっくりしていきなさい。話はそれからだ。」 近藤さんがそう言うと、土方歳三が素早く間に入った。 「おい、待ってくれ近藤さん。まさかこいつをここに住まわすなんて言うんじゃねぇだろうな?」 「もちろんそのつもりだ。」 きっぱりと言い切った近藤さんをみて、土方歳三は顔をひきつらせた。 「おい冗談だろ?こいつがこの時代のやつじゃねえってのは信じるしかねえが、まだこいつのことを信用しちゃいねえ。そんなやつを屯所に住まわすってのか!?」 「そうだ。深山君が先の時代から来た、と言うならば、この時代ではまだ住まいがないのだろう?この時代の常識だって先の時代とは違うかも知れん。そんな深山君が、今の京をうろついてみろ。すぐに不逞浪士に斬られてしまう。」 「そんなの俺らには知ったこっちゃねえ。」 「歳!!君はまだ幼い少年を見殺しにするのか!!それが武士のすることか!!これは局長命令だ。こうして新撰組にきたのも何かの縁。深山君さえ良ければ、新撰組に好きなだけいなさい。」 話を急に振られた私は戸惑い、土方歳三の顔色を窺うが、"局長命令"と言われてしまえば為すすべもないらしく拗ねたような顔で畳を睨みつけていた。
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