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「ちょっ………と……待…て。もう疲れた……」
「やっぱ体力ねえな~みゃーは。」
手に持った枝を振りかざしながら全力疾走した私は、神社の階段を駆け上がる瑞希に追いつこうと頑張ったんだけど、半分を過ぎたくらいでギブアップ。
瑞希は、階段の上で、息一つ乱さずに笑っている。
悔しいから、持ってた枝を杖代わりに一段一段上がっていく。
「……やっと追いついたあ……。」
なんとか上まで辿り着いた私は、一番上の階段に座り込んだ。
瑞希も、笑いながら私の隣に座る。
「無駄な体力つかわせやがって……。バカ瑞希。」
「俺のせいかよ!!まぁみゃーにしたら頑張った方だって。」
「うるさい。みゃーって呼ぶな!!ちゃんと櫻様と呼べ。」
「やだよ。まだみゃーはみゃーなんだ。」
「なにそれ。」
笑いながら話す瑞希につられて、私も笑う。
つい話し込んでしまった。
これから生活や友達のこと。今までの話だってたくさんした。
気がつけば、いつの間にか陽は傾き始めていた。
「やばっ待ち合わせ間に合わなくなるぞ!早く帰って着替えないと。」
そう言って瑞希は立ち上がった。
携帯を開いて時間を確認すると18:20。
「あと40分しかないじゃん!!!」
私も慌てて立ち上がる。
すると立ち上がった瞬間、視界が歪んだ。
あれ………?
ああ……立ち眩みだ……。
急に立ち上がったからかな?最近貧血気味だったし…。
と理解した時には遅かった。
もう体は傾き、重力に従って落下をはじめようとしている。
ふと視界に入った瑞希の顔は、焦りからか蒼白になっていた。
変な顔……。
酸素が足りていない頭でそんなことを思った。
薄れる意識の中、瑞希の声が聞こえた。
「さくらっ!!!」
前に一度だけ瑞希に櫻って呼ばれたな…いつだっけ?
そう思ううちに意識は途絶えた。
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