2人が本棚に入れています
本棚に追加
彼女の背後数メートルを、周りから見えないように着いていき、なるべく彼女が危険な目に逢わないようにする。もし彼女を傷つける輩が現れたなら、さっきのように颯爽と登場し、そんな不届き者をサクッとやっつけ、サキの心臓をもらってしまえばいいのだが、どうせなら彼女が本当に困っているときに助けてやりたいものだ。
そんなことを考えているうちに、サキは一人の少年と話していた。見てくれは彼女と同い年ほどで、この時代の人間として相応な背丈に、やや大きめの服を着て、草履を履いてやってきた。
「サキ、大丈夫だったか?また石頭たちが……!」
どうやらサキを殺そうとしていた連中は石頭と呼ばれているらしい。子どもが森で遊んでいるだけで物の怪呼ばわりし、殺しにかかるほど頭が硬いのだからそれは当然だろう。
「うん。でもね、親切な人がた」
言いかけたところで、時間が止まった。テレビゲームで言うならポーズ。ビデオテープなら一時停止。この物語の場合、エンキドゥが読者とコミュニケーションを取るための手段であり、彼を含めた全てが停止する。動くのは彼の口だけだ。
「おっひょっひょ危ない危ない。私めの存在をここで明かされてしまわれてはこちらとしても花仇都合の悪いことになっちょびますからね。そういうわけだからサキちゃ~ん……僕らの関係契約好きなアニメ作者のニキビの数その他もろもろは全て秘密にして……ちゃぶ台っ!」
最後は頂戴と言いたかったのだが、口と脳の間ではちょっとした喧嘩が起こっているらしく、口が脳の指令を無視しているようである。
「あ、準備できたの?はい。ではスタート!」
再び物語は動き出した。
「うん。なんともなかったよ。大丈夫」
「そっか、ならいいんだけど……」
どうも二人の間から桃色のオーラを感じてしまうが、エンキドゥにとってそんなことはどうでもよかった。今はサキの心臓をもらうため、彼女が最も危険になるときを待たなければ……。
最初のコメントを投稿しよう!