愉快通快魔界

4/5
前へ
/39ページ
次へ
 それから、少女は目を覚まさなかった。  心臓は普通に動いている。しかしながら意識が全くない。  男は、再び一人になった。誰も彼に話しかけず、目も合わせず、助けてはくれなかった。  そんなある日のことだ。妙な男が彼のもとを訪れた。髪を逆立て、シャツを着ずにジャケットを羽織り、現代的なジーンズを履いた好青年だった。  青年は彼の家に入り込むと、突然こんなことを言ってきた。 「彼女、このままだと大変なことになりそうだ」  突拍子もない言葉に彼は驚かされたが、とりあえず話を最後まで聞くことにした。 「彼女、穢れなき魂を持ちながら、ちょっとしたことでこの地獄へ堕ちてきてしまったんだ。そして、その魂はここの穢れに慣れてなかったらしいね。このままだと、悪魔になってしまうだろう」  かなりいい加減かつ読者を置いてきぼりにする説明だったが、彼からしてみれば、この男に頼る他に道はない。少なくともこんなことを伝えに来たのだ。何かしらの解決策を知っているだろう。 「彼女を救いたいのなら、現世に向かい、穢れなき魂を持つ乙女たちの心臓を持ってくることだ。それらに穢れを移すことにより、彼女の魂を救えるだろう」  つまり、彼女のためにたくさんの少女が犠牲になるということだろう。だが、彼にとってそんなことはどうでもよかった。自分が救いたいのは彼女一人であり、他の誰かではないのだから。 「どうやら決まったようだね。では君には今から日本の安土桃山時代へ行ってもらうことになる。穢れなき魂なんて、数百年に一つあって珍しいくらいだからね。私の力で送ってやるよ」  勝手に話が進み、やや訳がわからない気がしないでもないが、残された時間も少ないだろう。すぐに出発しよう。image=412879596.jpg
/39ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加