怪魔道中記

3/12
前へ
/39ページ
次へ
 わたしは、サキ。  みんながわたしを物の怪と呼ぶ。  わたしは物の怪なんかじゃない。ただ森が好きなだけ。  なのに、どうしてわたしが殴られるの?どうしてわたしが蹴られるの?  どうしてわたしが……。  今日はがんばって逃げたと思ったけど、やっぱり駄目だったみたい。みんなが刃をかがやかせながらやってくる。そろそろほんとに死んでしまうような気がした。  ああ、これでわたしはほんとに物の怪になってしまうんだろう。だとしたらこいつらを呪ってやる。末代まで呪ってやる。こいつらの屍を八つ裂きにして、みんな地獄の底へばら蒔いてやる。  そして、ある男の持っていた刀の切っ先が、わたしの首に触れようとした瞬間。  何かが飛んできた。わたしの首は繋がっていた。 「今時か弱い女の子虐めなんて、カッコ悪いよ?」  声の先には、なんとも奇っ怪な格好をした男がたっていた。全身に張り付いたような服を着て、背中には羽根のようなものがあり、その両腕には鎖が巻き付いていた。  そして、その鎖の先には巨大な刃が繋がれていて、それに挟まれるように、小太刀があった。  わたしの目の前にいた男の手に握られていた小太刀は、いつの間にかなくなっていた。  この時わたしは、ようやく彼がわたしを助けてくれたとわかった。彼はその小太刀を後ろに放り投げ、右腕に繋がった大きな剣を空に掲げ、声高らかに名乗りをあげた。 「あてなき旅の道筋は、あの道、この道、剣の道。  二振りの剣携えて、いつか目指すは天下無双。  相対するは悪虐非道、道理の通らぬ超悪党。  一度しかないこの人生、燃やして見せよう我が命。  頼れる仲間は獲物だけ、極めて見せるぜ二刀流!  女ァいたぶる野郎どもは、この俺が許さねぇ!」  彼は、剣を構えこちらに突進してきた。
/39ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加