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わたしは、サキ。
みんながわたしを物の怪と呼ぶ。
わたしは物の怪なんかじゃない。ただ森が好きなだけ。
なのに、どうしてわたしが殴られるの?どうしてわたしが蹴られるの?
どうしてわたしが……。
今日はがんばって逃げたと思ったけど、やっぱり駄目だったみたい。みんなが刃をかがやかせながらやってくる。そろそろほんとに死んでしまうような気がした。
ああ、これでわたしはほんとに物の怪になってしまうんだろう。だとしたらこいつらを呪ってやる。末代まで呪ってやる。こいつらの屍を八つ裂きにして、みんな地獄の底へばら蒔いてやる。
そして、ある男の持っていた刀の切っ先が、わたしの首に触れようとした瞬間。
何かが飛んできた。わたしの首は繋がっていた。
「今時か弱い女の子虐めなんて、カッコ悪いよ?」
声の先には、なんとも奇っ怪な格好をした男がたっていた。全身に張り付いたような服を着て、背中には羽根のようなものがあり、その両腕には鎖が巻き付いていた。
そして、その鎖の先には巨大な刃が繋がれていて、それに挟まれるように、小太刀があった。
わたしの目の前にいた男の手に握られていた小太刀は、いつの間にかなくなっていた。
この時わたしは、ようやく彼がわたしを助けてくれたとわかった。彼はその小太刀を後ろに放り投げ、右腕に繋がった大きな剣を空に掲げ、声高らかに名乗りをあげた。
「あてなき旅の道筋は、あの道、この道、剣の道。
二振りの剣携えて、いつか目指すは天下無双。
相対するは悪虐非道、道理の通らぬ超悪党。
一度しかないこの人生、燃やして見せよう我が命。
頼れる仲間は獲物だけ、極めて見せるぜ二刀流!
女ァいたぶる野郎どもは、この俺が許さねぇ!」
彼は、剣を構えこちらに突進してきた。
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