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いい天気だ。 シゲは窓の外を眺めながら、大きく欠伸をする。春眠曉を覚えずとはよく言ったもんだこんちくしょーめ。そしてふいに、今日明日、日直だったことを思い出して、眉根を寄せる。 ドアががらっと開いて、星名先生が入ってきて、僕は顔をしかめた。30前、ガタイ良く、顔良く、気は強い。学校のアイドル…とまではいかないが、人気の先生だ。 いや入ってきて顔をしかめるほど彼女が嫌いなのか と、早計な読者諸君は思われるかも知れんが少し待ってもらいたい。シゲは彼女が嫌いではない。どちらかと言えば、むしろ好きなのだ。 そうではなく、その後ろに、見知らぬ男子がついてきていたことに、彼は眉を寄せたのである。 彼だけではない。クラス中みんなが、男子を見てざわめいている。その男の容姿がいいこともあって、女子のざわめきは大きくなっていく。 「はい、みんな静かにして」 星名先生がクラスを沈める。 「今日から転校生が、私たちの仲間に加わります。じゃあ羽田君。」 星名先生に促され、彼は頷き、一歩進み出る。 「羽田虎次郎と言います。よろしくお願いします。」 ずいぶん、はきはきした口調だな。シゲはそう感じながら、次の言葉を待った。 ところが。羽田はそこまで言うと、さっさと後ろに下がってしまった。 星名先生を含む全員が、一瞬呆気にとられた。彼一人が、涼しい顔でそこに立っていたのである。
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