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その昔、クムサの地には大きな河があった。
まるで龍が横たわっているかのように見えるその河は、度々氾濫を起こし、田畑を荒らし、人家を流し、人々を苦しめていた。
ある時、年若い巫女が河の主の声を聞いて、人々に告げた。
――河の主を『河伯(かはく)』として崇め、貢ぎ物をしなさい。貢ぎ物は金、銀、玉。そして、娘。
生け贄を差し出せと言われた人々は色めき立った。だが、巫女は静かに口を開く。
――生け贄には妾(わたし)がなりましょう。
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