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王都から離れた、とある閑静な森。
喧騒とは無縁、そして人の利益となるものとも無縁な、都会の人間からしたら無価値にも思える場所だ。
そんな、ほとんど人が立ち入ることのない森――のはずが、そこに毎日通う少女がいた。
今日も彼女は腰に剣を携え、幼さの残る顔を引き締めて、剣を振るう。
彼女の名は、セシリア=メルティバーク。
今年で14を数える歳の、この国の王の子だ。
「……よし、今日は調子がいいみたい」
しばらく鍛錬していたセシリアは、今日のコンディションが良好であることを確認した。
「これなら、今日こそはきっと……!」
自然に、口元が綻ぶ。
逸る気持ちを抑えて、彼女は森の奥へと進んでいく。
しばらく行くと、拓けた場所についた。
奥の方には、非常に浅い泉がある。
「今日こそは、”カミナ”を手に入れる。
そして、私も……!」
幼き頃から目標としていたものに、もうじき手が届く。
そう考えると、セシリアの胸は躍った。
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