0-1.Collapsed ordinary days

2/16
33人が本棚に入れています
本棚に追加
/143ページ
王都から離れた、とある閑静な森。 喧騒とは無縁、そして人の利益となるものとも無縁な、都会の人間からしたら無価値にも思える場所だ。 そんな、ほとんど人が立ち入ることのない森――のはずが、そこに毎日通う少女がいた。 今日も彼女は腰に剣を携え、幼さの残る顔を引き締めて、剣を振るう。 彼女の名は、セシリア=メルティバーク。 今年で14を数える歳の、この国の王の子だ。 「……よし、今日は調子がいいみたい」 しばらく鍛錬していたセシリアは、今日のコンディションが良好であることを確認した。 「これなら、今日こそはきっと……!」 自然に、口元が綻ぶ。 逸る気持ちを抑えて、彼女は森の奥へと進んでいく。 しばらく行くと、拓けた場所についた。 奥の方には、非常に浅い泉がある。 「今日こそは、”カミナ”を手に入れる。 そして、私も……!」 幼き頃から目標としていたものに、もうじき手が届く。 そう考えると、セシリアの胸は躍った。
/143ページ

最初のコメントを投稿しよう!