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剣を隅に置き、高価な皮のブーツが濡れることも気にせず、セシリアは泉に入る。
泉の中心まで来たところで、雑念を消し去り、目をつぶる。
そして、今までと同じように、一言つぶやく。
「……カミナ」
成功すれば感じるであろう、身体を駆け巡る魔力と力。
それをじっと待つが……
「うっそ……また失敗?」
手ごたえのようなものを感じていたセシリアは、落胆しながら長い銀の髪を捲し上げる。
「……はぁ。なんで成功しないのよ……
一個年上なだけのアイツは、もう三年も前に成功したってのに……」
これも、いつもと同じ。
愚痴りながら、セシリアは泉から出た。
王都は、大陸一と謳われる立派な城を中心とし、その周囲に城下町、さらにその城下町を守る高い城壁に覆われている。
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