1.不知火狂子の暴走

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「さて…………」 重い沈黙を最初に破ったのは、黒い眼帯を身につけた男だった。 その隻眼の男は静かに息を吐く。 煙草の白い煙が部屋にゆらゆらとたゆたうのを静かに見ながら、彼は言葉を紡ぐ。 しんと静まる部屋の中で、低い凛とした声が響く。 「自分たちが何故ここに呼ばれたのか……分かっているよな?」 その声は優しく穏やかであったが……どこか、有無を言わせぬような響きがあった。 真剣な表情で、彼は目の前にいる2人を見る。 見る者がすくんでしまいそうな程の鋭い眼光で。 声をかけられた2人の少年少女はそれでも物怖じすることなく、声をそろえてこう答えた。 「「分かりません☆」」 ――満面の笑みで。 「…………………」 部屋に再び、冷たい沈黙が流れた――。
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