■02:砂浜の彼女

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…今日はどうやら、本当に厄日らしい。 あのドSの姉に逆らおうものなら、それこそ命が幾つあっても足りたもんじゃない。 そそくさと自分の部屋に逃げ帰る。 今晩は溜め込んであったお菓子で凌ぐこととしよう。 着替えを済ませ、暫く使うことのないであろう学校の制服を、手際よくクローゼットへと仕舞う。 …そしてベッドに腰掛け、恐る恐るギプスを解いていく。 医師には取り敢えず2週間ほどつけているよう言われたギプス。 運動を控え、微熱が出るかもしれないと注意も受けた。 その説明の合間に提示されたレントゲン写真も自分でも確認した。 確かに腕の骨は折れていたのだ。 なのに今は、何事もなかったかのように、自由に腕が動かせる。 どこにも傷一つ確認できない。 まだ多少の痛みは残っているものの、ついさっきまで骨が折れていたとは思えない。 …一体あの女の子は何者だったのだろうか。 どうやら本当に、傷や怪我を瞬時に治してしまう力があるらしいが。 見た限りでは人間だった。そしてパジャマ姿であったことから、近くの病院の入院患者であることは見当がつく。 だが彼女自身、どこか身体が悪そうには見えなかった。 極めつけには気配もなく現れ、そこから空間を飛んだように消える芸当も見せた。 信じられないが…彼女は幽霊か何かだったのだろうか? 恐らくあの病院のどこかの部屋で亡くなった患者で、 俺は何かの縁で彼女から施しを受けたとでもいうのか…?
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