■02:砂浜の彼女

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実技試験というのは教習所の話だ。 最近俺は単車の免許を取るために教習所に通っている。 町から少し遠い場所になるのだが、ここ3週間ほぼ毎日のように通ってきた。 …これまで一体何日学校をサボり、注意を受けたことか。 しかし今日はついに最後の試験。合格すればようやく俺も普免持ちだ。 正直失敗する気はしない。 この腕の調子も良いことだし。 一時はどうなることかと思ったが、もう心配することはないだろう。 昼過ぎ。 温かい陽が差し込む電車内。 胸のポケットには真新しい免許証。 …無事、試験には合格。 これで俺も普通車までの運転ができるようになった。 別に単車や車を買う予定があるわけではないが、なんというか、 なんとなくこれで自分の移動範囲が拡大した気がして嬉しかった。 この夕暮町は県内でも一二を争う田舎だから、以前から都会に赴いてみたいと思っていたのだ。 それが何だか一歩、実現に近付いた気がした。 夕暮駅。 まばらな人混みの中を抜け、特に用事もなくなった俺は、家路に就く。 途中、中古車店の幟が見えたが、覗きに行ってしまえば欲しくなるのでやめた。 夕暮町浦上病院前。 昨日俺が診察を受けた病院だ。 …そこでふと足を止める。
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