1人が本棚に入れています
本棚に追加
この裏手にある砂浜…。
昨日、あの女の子と出会った場所だ。
彼女はまた来ているだろうか?
一度あの子には御礼を言っておきたい。
真っ直ぐその砂浜へ向かう。
…絶えず鼻を突く潮風。
引いては返す波。
しかし足跡一つないその砂浜には、やはり誰もいなかった。
まあ、別に会えるという保証は無かったことだし。また別の日でもいいだろう。
そう思って病院の方向へ引き返そうとした、その時、
「…君」
1人の男の人がすれ違いざま、こちらに声をかけてきた。
俺より少し年上で、眼鏡をかけていて、優しそうな人。
俺には全く面識のない人物だった。
「何ですか?」
「砂浜の方へ歩いていくのが見えてね。悪いけど、少し気になって覗かせてもらったよ」
「どうしてそんな事?」
「君、誰か探してるみたいだったからさ。…もしかしたらあの子かなって」
「………………」
「やっぱり、そうなんだね?」
「彼女の事、知ってるんですか? あなたの知り合いだったりとか?」
「そんな親密な関係ではないよ。ただ、妹はその子を見ることができるらしくてね」
「見ることができる…?」
「まあおいでよ。僕は佐波司麻。君みたいな人間にはあまり出会えるほうじゃないからね」
彼はそう言ってうっすら笑みを浮かべると、俺を病院へ誘った。
最初のコメントを投稿しよう!