■01:プロローグ

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12月22日。 今日は実に運の悪い日だ。 午前中までの学校が終わり、明日から始まる冬休みという長いイベントに胸躍らせながら軽い足取りで帰路に就いていた。 別に前方不注意とか空を見上げていた訳ではない。 ただ単に、俺の厄日と気候の悪さが重なっただけだ。 途中の長い下り坂。…凍っていた路面に足を滑らせ、まるでコントで見るような綺麗なフォームで見事に転倒した。 お陰で利き腕である右腕は骨折。 上腕骨の一番太い箇所をパキッといってしまった。 …まさかの事故だった。 すぐさま病院で治療を受けた俺は、カチカチのギプスを纏いながらも自力で自宅への足取りを続けていた。 というのも迎えを頼めるような人物は身の回りに居ないし、幸い入院や手術が必要な程でも無かったからだ。 青天霹靂の気分の中、精神的には満身創痍である。 …そんな気分で、ふと横を見る。 エメラルドグリーンに染まった海。 昨日まで天候が悪かったせいだろうか。 すっきりしたような青空のもと、穏やかな風と波が磯の香りを運んでいた。
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