助けて!

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助けて!

 叫んだかどうかわからない。凶器と殺意を持った相手に私は背を向けて逃げることもできず、生きる本能でなんとか攻撃をかわしていた。それだけに必死で、声を発したかどうかまで意識が回らなかった。  結果、ちゃんと声を上げていたのだろう。助けが来た。  しかし、警察ではない。小学生の通学路に立っているようなおじさん達が、群がって男を取り押さえた。  自警団というのだろうか。地域住民を犯罪から守るため、元警察官や素人が結成した団体。それが新しく立ち上がったという記事を、新聞の地方ニュースの欄で目にしたような気がする。  彼らは男を引っ立て、警察に通報した。そして、その中の1人が笑顔で言った。 「テレビに出られるなぁ」 他の人達も、私を輪から外して、まるで町内会の行事後のような雰囲気でいる。  ……呆気にとられてしまった。  自警団員は、「君もテレビに出られるね、よかったね」というニュアンスで言っていた。
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