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十 梨桜(ツナシ リオ)女を彷彿とさせるような名前なのだが、僕はれっきとした男であり、オカマやニューハーフ等の異常者では無い。
苗字は十というPCで変換しても出ない程に、マイナーな読み方ではあるのだけれど、これが正真正銘僕の苗字なのである。
そして、僕は語り部でも無く出演者。しかも主人公である。
それなりに物語の主人公らしい名前をしてるでしょう?
顔も、物語に出て来る主人公のように良い造形をしているし、それに見合うよう努力もしてきてる。
髪を伸ばして、切り揃えて、決める時はワックスを使ったりして、服屋でバイトしてセンス磨いたりして。
自分を磨く。なんていう言葉が似合うような行動を取って来た。
まあでも、そんな僕はこれから、主人公らしからぬ行動を取り、自主的に死ぬことになるのだけれど、そんな死が、モノローグでありプロローグ。そんな下らない物語の始まりである。
高層ビルの屋上。ビル風が吹き荒れ、そのせいもあり、全くと言って良い程人が来ないこの場所に、1人の少年。十 梨桜の姿が、そこにはあった。
梨桜は黒く大きなヘッドフォンを耳に当て、それに繋がったオーディオプレイヤーで音楽を聴きながら、屋上の手すりを乗り越え、現在は屋上の端。
下を見ると、ミニカーよりも小さく見える車が走るところや、最早小さすぎて、ゴミの様にしか見えない人が横断する姿。
そんな、都会上空から見た場合に置ける、一番ポピュラーな景色が、梨桜の視界を支配していた。
アハハッ! 人がゴミのようだ。
梨桜は、自分が高い位置。しかもいつ落ちてもおかしくない場所に居るにも関わらず、微塵の恐怖も感じずに、ふざけたことを考えていた。
高所恐怖症の人間でなくとも、少なからずの恐怖を感じてもおかしくは無い風景にも関わらず、である。
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