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そこからの行動は早かった。
梨桜は死を軽く見ている訳では無い。だから心情的に、自分が最も良いと思う状態で、死にたいと思い、それを実行することにした。
歯を、いつも以上に綺麗に磨き、顔を、皮膚が剥がれるんじゃないかというほどに丁寧に洗い、自分が最も好きな服。好きなファッションにコーディネートし着替え、耳に掛けるタイプの小型ヘッドホンを耳に当て、曲を聴く。そして携帯や財布、それを入れる鞄に、身を守る防衛道具等、何時も身に着けている物を身に着けた。
そして、身形を整え終えると外に出て、梨桜が知る限りの、一番高い高層ビルの屋上で、死ぬことにした。
本当は『恋人岬』等の、自殺の名所で死のうかとも考えたが、学生である梨桜に海外へ行く程の所持金も無く、諦めた。
日本にも自殺の名所はあるのだが、梨桜は何と無く、海外にしかない気がしていたようだった。
そういう理由もあり、梨桜は現在この場所に居て、飛び降りようとしている訳なのだ。
「……そろそろ、良いかな」
景色にも飽きて来たし。
先程までは、高い所からの景色を楽しんでいたような梨桜だが、興味が無くなったのか、休に冷めたように呟いた。
そして、立ち幅跳びをやるが如く飛ぼうとして、思いとどまった。 っとと……車道に落ちたら、車に乗っている人に迷惑がかかるな。
歩道に落ちても、真下に人間が居たら、その人間まず即死なのだが、梨桜は気付いていなかった。
漫画などでの自殺では、そんなことが起こったことは無いという、浅はかな思考のせいだろう。
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