狩人の心得

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「そうだ、俺はちょっくら用事があるんだった。 悪いけど先に帰るな」 「あぁ」 軽く手を振って駆け足で鍛冶屋を後にするセロ。 …どうせ食堂か農場であろうと推測するアオイに、またも老人が話かける。 「そんでもってこれも出来上がっとる」 「ん?……おぉっ」 懐から取り出した小さな箱の中には、綺麗な碧色の勾玉が付いたペンダントが入っていた。 「素晴らしい。 図面通りだな」 声を少し高くして喜ぶアオイは本当に嬉しそうで、早速首にかけた。 「破片とはいえ雷狼竜の殻を手に入れるとは運がいいのぉ。 しかし本当にペンダントでよかったのかい? 砕いて武器に混ぜれば微弱でも『雷属性』を付加できたというのに」 「いいんだこれで」 アシラヘルムを脱いで脇に抱え、束ねた髪をほどきながら呟く。 「このペンダントが、あの雷狼竜を思い出させてくれる…。 あの戦慄を再び感じることで、最近忘れがちな『おそれ』を思い出すのだ…」
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