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恐る恐る、広くはない部屋の中を見渡していく。
自分の寝室に使っている四畳半の小さな部屋。
台所が併設された六畳の居間。
風呂場、トイレ、狭いバルコニー…
決して広くはない室内、見て回るのは直ぐに終わった。
別に窓も開いてないし、隙間風が入ってくる程ボロっちくもないし…
「…何だったんだ?気のせい…じゃあねぇよな、やっぱり…」
現に半袖のシャツから出ている両腕には鳥肌も立っている。
ゴシゴシと両手で擦っても、なかなか収まらない。
「風邪でもひいたか…?」
取り敢えず、薬を飲んで今日はもう寝よう。
まだ日は沈んみきってはいなかったが、別に寝るのに早すぎる時間じゃない。
そうと決まればまずは戸締まりだと、玄関に足を向けた時だった。
目に飛び込んできた物に、思わず歩を止める。
「…手紙?」
小さな土間に置かれた、真っ白な小さい長方形。
郵便が来るのは別におかしいことではない…
だが何故"ここ"にある?
郵便受けは一階の管理人室の隣にそれぞれ設置されている。
当然玄関の扉に郵便受けなんて付いてないし、いくらボロいからと言って手紙を入り込ませる隙間も無い。
建て付けの悪さから音を鳴らさないで玄関を開けるのも不可能だ。
―…じゃあ何故玄関の内側に落ちてんだよ…?
誰かがこっそりと置いてく事だって、無理なはずなのに…
ひとまず流は外を確認してみることにした。
当然ながらギギギと耳障りな音をさせて開いた玄関の向こう側には、薄汚れた壁の他には誰も、何もない。
ただいつもと変わらない光景があるだけだった。
「………」
いつまで見ていたって埒が開かないので、手紙を拾って宛名と差出人を確認してみる。
ナツキ ナガレ
夏綺 流 様
宛名は間違いなく自分に宛てられたら物だった。
差出人は、無い。
「…気味悪い」
そのまま捨ててしまおうかとも考えたが、逡巡の末流は封を切った。
ガサガサと乾いた音だけが、室内を満たす。
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