第一章

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相も変わらずホームは気味が悪いくらいの静寂に包まれている。 こんな不気味な場所からは早く抜けでしたいと、早足で改札口へ向かった。  ……一度外へ出てしまえば寂しさは紛れるだろうと思っていた自分が馬鹿だった。 改札口を抜けた義隆を待っていたのは、何てこともない、ただの廃れた元商店街である。  普通車が並行で二台は通れるであろう道幅に並ぶ店達は、その全てにシャッターが下ろされていて人の気配を感じさせない。 手の中の握り潰してしまったプリントを伸ばし、もう一度よく見直した。 「『すずの荘』…お一人様5千円! 何泊でもご利用になれます。有野(ありの)駅より徒歩7分!」
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