第一章

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侘助にならば騙されるのも悪くない。 この三年間、何度も何度も義隆の愚痴や相談、時には恋の悩みまでも聞いてくれたのだ。 その都度、侘助は全てを受け入れ、許し、時には諭してさえくれた。 もし義隆がクリスチャンであったら、牧師とはこのような存在なのだろう。  そんな彼に怒りの感情を持つはずもなく、もし悪戯なのだとしても、彼なりに元気を与えようとしたのだろうと思う。 かなり下手ではあるが。  それでも必死で地図とにらめっこをしながら進んでいくうちに、少し先に細い路地が見えた。 まるで誘われているような。  そういえば小学生の頃に流行った都市伝説で、面白い話があったなぁと思い起こす。 確か、電柱と石垣の間を通るとあの世へ出てしまうとか何とか。
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