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子供ながらに、自分の身の丈以上ある何かの間を通る事はえも言えぬ恐怖だった。
本当にあの世に繋がってしまうのではないか、もう二度と戻ってこれないのではないか。
どこまでも続く細い路地にそれとよく似た恐怖感を覚える。
そんな時、必ず頭に浮かんだのは叔母の笑顔だった。
目尻には深い一本の皺が寄り、それと共にえくぼがきゅっとしぼむその顔は、いつだって義隆に勇気をくれた。
吸い込まれそうなほど深いえくぼを思い出しつつ奥へと進む。
やがて、一番狭い道に出た。
自転車も通れるか否かの細さである。
逡巡するも歩みを進めた先に待っていたのは、石造りのアーチだ。
それはとても低く、身長百六十七センチと一般男性よりもやや小さめの義隆が、腰を屈めてようやく潜れるほどだった。
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