第一章

12/17
前へ
/142ページ
次へ
子供ながらに、自分の身の丈以上ある何かの間を通る事はえも言えぬ恐怖だった。 本当にあの世に繋がってしまうのではないか、もう二度と戻ってこれないのではないか。  どこまでも続く細い路地にそれとよく似た恐怖感を覚える。  そんな時、必ず頭に浮かんだのは叔母の笑顔だった。 目尻には深い一本の皺が寄り、それと共にえくぼがきゅっとしぼむその顔は、いつだって義隆に勇気をくれた。  吸い込まれそうなほど深いえくぼを思い出しつつ奥へと進む。 やがて、一番狭い道に出た。 自転車も通れるか否かの細さである。  逡巡するも歩みを進めた先に待っていたのは、石造りのアーチだ。 それはとても低く、身長百六十七センチと一般男性よりもやや小さめの義隆が、腰を屈めてようやく潜れるほどだった。
/142ページ

最初のコメントを投稿しよう!

219人が本棚に入れています
本棚に追加