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アーチには不思議な柄が施されている。
大きなティアラを被った妖精が横一列に並んだような。
手や足の多い種類なのだろうか、ひらひらとしたドレスの下からは長い手足が沢山出ている。
それが根っこのように広がって見えた。
今は五月、足早で少し歩けば汗をかいてもおかしくないぐらいには温かい。
健康的なそれとは違う、冷たい汗を背中に感じながらも、義隆はアーチを抜け、その先に視線をやった。
そこに見えたのは、『すずの荘』と書かれた漆塗りの看板と、小さな宿屋らしき建物。
墨色の瓦屋根に白い壁と格子窓。
宿屋の全体に臙脂色の格子が張り巡らされている。
大きな玄関が義隆を歓迎しているかのように開け放たれていた。
視界が最終的に達するのは、宿の奥にある緑の庭。
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