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す、と衣擦れの音と共に撫子が立ち上がる。
そこでまた驚くべき事があった。
その身長は、義隆の胸にも満たなかったのだ。
綺麗な立ち姿に見とれていると、撫子が義隆へ近づいてくる。
綺麗に円を描くつむじに、義隆は落ち着きを失う。
くい、と撫子の顔が笑顔のまま上げられる。
「お荷物お持ちしましょうか」
差し出された両手に義隆は逡巡する。
いかに人形とはいえ、こんな小さな女性に荷物を持たせる事は出来ない。
「いえ、大丈夫ですよ」と断ろうとした瞬間だった。
ごとり、と。
向けられた手の片割れが、床の上を転がった。
撫子の笑顔より、更に視線を下に向けてみれば、そこには手袋を嵌めた肌色の塊。
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