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案内されたのは、階段を上がったすぐの西向きの一室である。
出入り口の襖の上方には無機質な字で『杜若の間』と書かれた木製の札がかけてあった。
掃除が行き届いているのだろう、すらりと開いた襖の奥には、見事な和室が用意されていた。
部屋の中央にちゃぶ台と座椅子のみなので、一見質素にも見える。
だが、硝子の向こうを覆う格子の隙間から漏れる夕日が、部屋を金色に染め上げていて、義隆はその美しさに目を細めた。
「素敵な部屋ですね……!」
思わず感嘆の声を上げれば撫子は「ありがとうございます」と定型文で返す。
「夕食は十九時に『暖の間』でとる事となっております。それまでは自室や、一階のロビーである『床の間』でゆっくりなさって下さい」
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